ウェアラブルは「測る」から「変える」へ。20分で脳を鍛えるMaveの挑戦
「測定」で終わらないウェアラブルが、ついに登場した。
Mave Healthの共同創業者でCMOを務めるJai Sharma氏は、業界の常識を真っ向から否定する。「ほとんどのウェアラブル企業は、すでに起きたことを教えてくれるだけ。ストレスを感じた後に『ストレスですよ』と伝える。それは体温計と同じだ。誰も体温計で話が終わってほしいとは思っていない」
Sharma氏が率いるMave Healthが開発したのは、非侵襲的な微弱電流刺激(tDCS)を使ったヘッドセット。装着時間はたった20分で、集中力やストレス調整、意思決定に関わる脳の領域を直接トレーニングする。
「業界は測定に偏りすぎていて、結果を出せていない。データを見せられた人に、次に何をさせればいいのか、そこが抜け落ちている」
その考え方の背景には、Sharma氏自身の痛烈な体験がある。2023年、彼と共同創業者のDhawal氏、Aman氏は、うつ病で親しい友人を亡くした。この喪失が、彼らをメンタルヘルスハードウェアの開発に突き動かした。
現在、Maveは数百人のアクティブユーザーに出荷を完了し、約285万ドル(約4億円)の資金調達を実施。米国市場にも進出している。
Sharma氏が最も重視するのは「継続率」だ。デバイスを買ってもらうだけでは意味がない。翌日も、その翌日も、習慣として使い続けてもらわなければ効果は出ない。
「ほとんどの人は、消費者向けニューロテックをハードウェアの問題だと思っている。でも本当に難しいのは、人が明日も使いたいと思うかどうか。ルーティンになるまで続けられるかどうかだ」
課題は認知のギャップにもある。tDCSは数十年の研究と家庭での使用試験が積み重ねられた、最も研究された非侵襲的技術のひとつだが、一般には「脳に電気を流す」というだけで拒否反応を示す人が多い。
「教育も製品体験の一部だ。信頼がなければ普及はない」
Sharma氏の長期的なビジョンは明快だ。メンタルパフォーマンスやストレス調整を、フィジカルトレーニングと同じくらい普通で偏見のないものにすること。
「もしMaveが私たちが信じる規模で機能すれば、脳をケアすることは日常の習慣になる。隠すものでも、奇妙なものでも、伝統的なケアを受けられる人だけのものでもない」
今年の消費者向けニューロテック市場は約26億ドル(約3800億円)に達し、年率20%近くで成長している。Sharma氏は、この波に乗って「もう一つのダッシュボード」ではなく、「人が実際に変化を実感できる道具」を提供したいと考えている。
「ニューロテックは信頼を勝ち取らなければならない。科学に誠実で、主張に規律のある企業が、これをただのウェルネストレンドとして扱う企業から分かれるだろう」
ウェアラブルが「見る」ための道具から「変える」ための道具へ。その転換点は、もうすぐそこまで来ている。
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